研究課題
本研究は、未分化胚性細胞から外胚葉細胞への分化決定を制御するmultiple Zinc-finger proteinsを中心とした分子発生学的解析により初期胚の神経外胚葉の発生制御機序を明らかにすることを目的としている。前年度までに、両生類外胚葉形成に必須のmultiple Zinc-finger protein XFDL156の哺乳類細胞における役割相同遺伝子Zfp12があきらかにし、その強制発現が未分化ES細胞から外胚葉に分化する過程を促進することが判ったが、外胚葉から神経外胚葉への分化は別の因子が関与している可能性が示唆された。そこで、マウスES細胞を試験管内でSFEB法を用いて分化させ、その神経分化のごく初期に活性化させる遺伝子をスクリーニングしたところ、別のmultiple Zinc-finger proteinであるZfp521がその候補として同定された。Zfp521は、BMP4や血清などの神経分化の強い抑制因子の存在下でも、強制発現によりES細胞に高効率で神経分化を誘導することが判った。さらに、逆に、Zfp521をshRNAでノックダウンしたES細胞はSFEB法で分化培養しても、神経分化が起こらず、epiblastの状態に長く留まっていた。Zfp521をshRNAでノックダウンしたES細胞をblastocystに注入して、キメラ胚を作成した場合も、それらの細胞は脳領域への貢献が得意的に抑制されていた。これらのことは、Zfp521がES細胞の神経外胚葉への分化に必要な神経分化促進因子であることを示した。さらに、クロマチン共沈降法により、Zfp521はSox3などの神経初期遺伝子に結合すること、またそれらの遺伝子にp300を集積されることが確認され、Zfp521は初期神経前駆細胞特異的遺伝子の発現を正に制御する転写活性化因子であることが明らかとなった。
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Nature
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Developmental Cell
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