研究概要 |
神経堤細胞の分化に関わる転写制御ネットワークの進化について、FoxD3が制御ネットワークの一員として機能するために必要であったタンパク質の進化を特定することができた。ナメクジウオFoxDや脊椎動物のD3以外のパラローグには存在しないN末のアミノ酸配列を特定した。その領域をナメクジウオの相当配列と交換すると、脊椎動物FoxD3遺伝子も神経堤細胞を誘導する活性がなくなった。それとは逆に、ナメクジウオのFoxDのN側の配列を脊椎動物FoxD3のものと入れ替えると、神経堤細胞分化を誘導することができるようになった。以上のことからN末のアミノ酸配列の固定が、FoxD3が神経堤細胞の分化に関わるために、必要であったことが結論づけられた。現在この配列と相互作用するタンパク質について検索している。また、msx,dlx,Pax3/7などの他の神経堤細胞分化に関わる遺伝子についても、同様のアプローチで、神経堤細胞の転写制御ネットワークに関与することと関連しアットアミノ酸配列の固定が見られるか、検討している。 また、半索動物ギボシムシに神経管の起源を探る計画において、ギボシムシの襟神経索でdlx,Pax3/7が背側に限定した発現を示すことを明らかにした。さらに、口盲管ではhedgehogの発現も見られており、脊椎動物の神経管を背腹軸に沿ってパターニングする制御機構がギボシムシでも成立していた可能性を示唆する結果を得た。
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