研究課題/領域番号 |
21370105
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
和田 洋 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60303806)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ギボシムシ / 口盲管 / 脊索 / 神経堤細胞 / FoxD / 棘皮動物 / プルテウス |
研究概要 |
脊索動物を特徴付ける脊索の起源に関して、hh遺伝子が口盲管で発現し、襟神経索の背腹軸に沿った分化に関与していることを示した。また、襟軟骨の発生学的な起源も明らかにした。これらの成果を現在論文として投稿中である。 脊椎動物を特徴付ける神経堤細胞の起源については、FoxD3遺伝子の分子進化と細胞タイプの進化を結びつける研究が進展した。脊椎動物のFoxD3遺伝子をニワトリ神経管に強制発現すると過剰な神経堤細胞を誘導することが知られていた。我々はナメクジウオのFoxD相同遺伝子や、脊椎動物のFoxDパラローグを強制発現した時には、神経堤細胞が誘導されないことを示した。そして、その活性の違いがN末の40アミノ酸配列の中にあることを示した。また、この40アミノ酸に結合すると予想されるタンパク質の同定に向けて、yeast two-hybridシステムでの解析も進め、候補となる遺伝子の絞り込みにも成功した。 棘皮動物の幼生形態の進化について、ヒトデと同じく幼生骨片をもたないナマコについて、トランスクリプトーム解析を行い、幼生期で発現する遺伝子セットを調べた。そのデータを利用して、ウニの幼生骨片の伸長に関わる遺伝子を調べたところ、Pax2/5/8, Otp, tetraspanine等いくつかの遺伝子がヒトデとは異なる発現をすることがわかってきた。これらの遺伝子は、ヒトデにおいては繊毛帯全体で広く発現するが、プルテウス型幼生のウニやクモヒトデでは、幼生骨片の伸長する腕の先端に限定的な発現を示す。驚いたことに、ナマコでの発現は、プルテウス幼生における発現と類似していた。この発現パターンは、ナマコの幼生形態はプルテウス型から二次的に派生したものであることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ギボシムシを対象にした脊索の進化、FoxDを対象にした神経堤細胞の進化、棘皮動物の幼生形態進化に関する研究、いずれも当初予想した以上の進展を見せて、論文を投稿する段階に達してきている。特に次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析により、遺伝子の単離、解析が圧倒的に迅速に行えるようになったことで、大きな進展に結びついた。
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今後の研究の推進方策 |
Pax1遺伝子を対象にした脊椎動物の咽頭分節の進化に関する研究を中心に、本申請研究の総まとめをしていきたい。また、次世代シーケンサー技術とバイオインフォマティクス解析の導入により、本研究で申請してきた個別の遺伝子の振る舞いと形態進化を結びつける進化の研究は、加速して進展させることができた。今後は、遺伝子のネットワークとしての振る舞いと形態進化を関連づけていく研究の基盤をつくって、さらなる発展を目指したい。
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