リニア植物が陸上植物の共通祖先であり、リニア植物型ボディープランが陸上植物共通の発生システムであるという仮説の妥当性を検証することを目的に、ヒメツリガネゴケのポリコーム遺伝子欠失変異体の無限成長分枝胞子体様構造の無限成長と分枝を制御機構を解析した。 オーキシンによる胞子体様頂端幹細胞の形成制御機構を調べるために、ポリコーム複合体II遺伝子欠失変異体にオーキシンシグナル可視化マーカーコンストラクトと胞子体頂端幹細胞分子マーカー発現コンストラクトを導入し、ライブイメージング観察を行った。その結果、(1)オーキシンシグナルの高活性化部位は胞子体様頂端幹細胞の形成部位に一致し、オーキシンシグナルの活性化が幹細胞の位置決定に関連すること、(2)胞子体様頂端幹細胞におけるオーキシンシグナル活性化部位は幹細胞マーカーが発現すると消失するため、胞子体様幹細胞にはオーキシンシグナル活性を消失させる機構が存在すること、(3)オーキシンシグナル活性化は胞子体様構造において表層の細胞に強く検出されることから、表層の細胞特異的にオーキシンシグナルを活性化する機構があることがわかった。 紫外線照射による突然変異誘発の作出系を確立し、分枝異常を示す突然変異系統が単離できた。約750系統中2系統で分枝異常を示したことから、スクリーニングする系統の数を多くすることにより、複数の分枝異常突然変異体を見いだすことができると考えられる。また、胞子体様構造体が全く形成されないなど分枝異常以外の表現型を示す系統も観察された。従って、分枝異常突然変異体のみならず、他の形質に注目した突然変異体の単離にも使用できる。本法を用いて作出した分枝異常突然変異体から、超並立DNAシーケンサーを用いて責任遺伝子を同定する系の確立は今後の研究課題である。
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