研究課題
【背景】石田肇(連携研究者)らの琉球諸島における歯冠形質にもとづく系統解析は、沖縄本島および本州日本が比較的近縁であるのに対し、先島諸島(宮古島と石垣島)は台湾原住民を介して沖縄本島と近縁で、アイヌにより近縁であることを示した。【目的】琉球諸島と本州日本(特に北部九州)のヒトの系統関係と形態的・生理的環境適応を明らかにする。【平成23年度の成果】(1)沖縄における炎症性腸疾患原因変異の調査:炎症性腸疾患の1つであるクローン病の原因変異の1つは、人類進化の歴史の中で単に中立変異として残ってきただけでは無く、近傍の変異が自然選択を受けてきたことに連鎖して人類集団中に維持されてきた可能性を示した(Nakagome et al.2012 ; Nakagome and Oota 2012)。これを受けおこなった調査の結果、昨年既に報告したクローン病の別の原因変異の頻度(Nakagome et al.2010)が沖縄と北部九州で有意に異なっていることを明らかにした(Nakagome et al.in preparation)。(2)沖縄本島・先島諸島由来試料を用いた歯冠形質決定候補遺伝子のSNP解析:昨年既に報告したアジアで広く見られるシャベル型切歯と強く関連している遺伝子の一塩基置換(Kimura et al.2010)が、第2大臼歯の形態小変異とも有意に関連していることを明らかにした(Park et al.in press)。(3)水田農耕の北部九州起源の検証:弥生時代に大陸から渡来したと考えられている水田農耕の拡散を日本列島全国13カ所の水田周辺から採取した野生メダカの分子系統を解析することで検証を行い、メダカの拡散が北部九州から起こった可能性が高いことを明らかにした(Katsumura et al.2012)。(4)アイヌ-沖縄同系論の検証:琉球諸島(沖縄本島、宮古島、石垣島)の住民とアイヌの人々の常染色体およびY染色体のSTR多型を分析した結果、男性の系統で琉球諸島住民とアイヌの間で強い系統的な近縁性の証拠が得られた(Koganebuchi et al.in press)。
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A nthropological Science
巻: 120 ページ: 81-89
DOI:10.1537/ase.110525
Molecular Biology and Evolution
巻: (In press)
doi:10.1093/molbev/mss006
Anthropological Science
巻: (印刷中)
Journal of Human Genetics