研究課題
本研究計画ではこれまでほとんど解剖されたことのないボノボの解剖を行い、解剖学的な基礎データの収集・備蓄を行うことを主目的とする。平成21年度にホルマリン固定した体幹と右側の前後肢のCT撮像を京都大学霊長類研究所において行った。その後、体幹から右側の前後肢を離断した。この時、腕神経叢と腰神経、仙骨神経、および腋窩と大腿・臀部の動脈の走行と、離断する筋の起始、停止、走行を記述した。離断後、体幹は体幹筋の形態学的検索をおこなった。前後肢は固定が不十分であったので再度ホルマリンに浸けた。体幹筋の形態学的検索の主な所見は以下の通りである。1)腸肋筋:第5肋骨以上では筋の発達は弱いが、明瞭な停止腱が発達する。第6肋骨以下に停止する筋束は起始範囲が広く、発達した筋を形成する。胸腸肋筋の起始の上限は第5肋骨であった。2)最長筋;内側停止列は、第4肋骨以下の肋骨と、第1腰椎の横突起に停止を確認した。筋束の起始は第7以下の肋骨と仙棘筋腹のほか、第13胸椎に起始する上行腱に由来する筋束が加わっていた。第12肋骨以下に停止する筋束は、腰背腱膜腹側面に起始していた。外側停止列は、第1~12肋骨への停止を確認した。外側停止列においてはいずれの筋束も腰背腱膜に起始する。3)棘筋:棘筋は、第1~8胸椎の棘突起に停止する明瞭な筋束からなっていた。4)横突棘筋系:第9胸椎以下では4体節上行する筋束が最長で、第5-8胸椎では7体節を上行する筋束が含まれていた第4胸椎より頭側では、5体節以上を経過することがない。他の霊長類の固有背筋についての所見との比較から、ボノボの体幹筋の筋構築はチンパンジーと同様の懸垂行動に適応したものであると認められた。
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