研究概要 |
本年度は,サイン波状運動負荷様式を用いた新たな運動負荷テスト法の開発に関する基礎的検討の継続と,指数関数型漸増負荷(STEEP)運動試験の実用性を検討した。基礎的検討として,10名の被験者を対象に,運動肢への血流応答(大腿動脈)が観察可能な,両膝伸展運動装置によるサイン波状負荷運動を行い,その際の肺での02摂取,中心循環による02-delivery,運動肢への末梢循環,筋での02消費という,02-cascade上にかかわる全ての変量を同時測定した(古賀・福場)。次に,一般の運動負荷試験で用いられる自転車エルゴメータによるサイン波状負荷運動中,上述の運動肢への血流測定を除いた諸変量と,皮膚血流・発汗率を同時測定した(福岡・福場)。両実験の結果,02-cascadeにかかわる諸変量は,ほぼ同じ位相遅れで応答することが示された。すなわち運動負荷入力に対して,呼吸-循環-骨格筋は全身的連関的によって調節されているがわかり,肺でのガス交換や,心拍数,血圧といった中心循環パラメータを測定することで,有酸素性作業能力の統合的評価が可能であることが示唆された。また,これらの実験で,非運動肢への血流(上腕動脈)応答が,02-cascadeにかかわる応答とは全く異なることがわかり,それは,前腕部や手掌部の皮膚血流や発汗率の応答とも関連しておらず,脳血流応答と共に,今後,検討すべき課題となった。応用的検討として,STEEPとランプ負荷による最大運動負荷試験を,30名の健常被験者に実施し,4種のaerobic parameterであるVO2max,AT,平均応答時間,△VO2/△WRを推定し,比較検討した。その結果,静的指標である前者2つ(VO2maxとAT)には一致性が認められたが,動的指標である平均応答時間には一致性が認められず,STEEPの問題点としてあげられた。
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