研究概要 |
サイン波状負荷変動を用いた運動負荷テスト法の方法論的妥当性を検討するために,昨年度までは,その周期を4分に固定して行っていたが,今年度は,AT以下の運動強度領域で,異なった周期(2分,4分,6分)でのサイン波状負荷運動を健康な被験者7名を対象に課し,酸素運搬系を支える諸変量を同時に連続測定し,それらの動特性を比較,検討した(福岡,分担)。その結果,肺でのガス交換や中心循環諸変量では,周期が短くなるにつれて,有意に位相が遅れ,変動性も減少したが,4分と6分の間に大きな差異は認められなかった。従って,実用的なプロトコールとして4分周期を採用すべきであることが確認された。 昨年度まで,方法論的研究と並行して,サイン波状負荷変動を用いた運動負荷テスト法の生理的妥当性を検討する基礎的検討実験を,分担者・連携者と共に行ってきたが,その中で残されていた課題は,循環系の統合的調節,特に,運動に関与しない部位・臓器・器官への血流配分調節機構の解明と,活動筋での02-kinetics,すなわち運動に参画している骨格筋での酸素消費の詳細な応答性の検討であった。そこで本年度は,自転車エルゴメータを用いてサイン波状負荷運動を健康な被験者7名に課し,その際の非運動肢(上腕動脈)と脳(総頚動脈と中大脳動脈)への血流を超音波ドップラー法によって測定(林,分担)し,中心・末梢循環の統合的な応答(動特性)の解析を行った。同時に,大腿部の活動筋(大腿直筋ならびに外側広筋)を対象に,近赤外線分光法を用いて,筋での酸素諸費(deoxy-Hb)の動態を測定(古賀,分担)し,解析した。その結果,上腕動脈の血流応答のみがサイン波状負荷変動と逆位相の応答であったが,他の諸変量は,肺酸素摂取量で見られた位相遅れと類似の動特性を示し,酸素運搬系全体は極めて密接な制御がなされていること(全身的協関の存在)が明らかになった。
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