研究概要 |
今年度得られた主な研究成果は次の通りである。 1.テンサイにおける細胞質雄性不稔性成立のメカニズム解析 (1)Owen型細胞質雄性不稔の原因ミトコンドリア遺伝子atp6プレ配列について、ビート栽培種(Beta vulgaris subsp.vulgaris;テンサイ、フダンソウ、テーブルビート、飼料ビート)とその近縁野生種における分布を調べた。その結果、フダンソウ遺伝資源のごく一部にatp6プレ配列が見つかった。一方、今回供試した野生種(B.vulgaris subsp.maritima, B.vulgaris subsp.adanensis, B.trigyna, B.macrorhiza)にはatp6プレ配列は全く見出されなかった。したがって、Owen型細胞質雄性不稔の原因遺伝子はB.vulgaris種が成立した後に誕生した可能性が高い。 (2)atp6プレ配列の一部は、細胞核ゲノムからミトコンドリアゲノムへ移行した塩基配列に由来する可能性を強く示唆するデータが得られた。 (3)パキスタン原産の野生ビートより発見された細胞質雄性不稔性の原因ミトコンドリア遺伝子orf129の分布を調べた。その結果、B.vulgaris subsp.maritimaやフダンソウおよびテーブルビート遺伝資源中に、orf129が散発的に見出された。フダンソウにおいてorf129の発見される頻度はatp6プレ配列の発見頻度よりもやや高い傾向にある。ただorf129の起源に関しては今のところ明らかでない。 2.ホウレンソウにおける雌雄性成立のメカニズム解析 ホウレンソウの雌雄性分離集団を用いた解析を通じて、雄性決定遺伝子Yと密接に連鎖する10個のAFLPマーカーを設定することができた。その内4個のマーカーはY遺伝子との共分離を示しており、今後Y遺伝子のポジショナルクローニングを進める上で利用価値の高いマーカーを入手したことになる。
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