食糧との競合を回避するために、食用作物を対象にエネルギー作物としての利用を可能とし、さらに対象作物の栽培技術体系を大きく変えることなく且つエネルギー作物としての能力を十分に備えエネルギー生産に特化した専用品種の開発が必要となる。本研究では、イネを材料に高度に集積しつつあるゲノム情報を利用し高バイオマスイネの作出の可能性を探るとともに、エネルギー作物として付与されるべき遺伝形質の同定とそれらを育種へ応用するための知見を得ることを目的に研究を推進した。 本年度は、初年度に茎葉部バイオマス増大に効果を示すと思われる高次分〓突然変異体(NM3-691)の原因遺伝子同定のために、多収系統と交雑を行った雑種集団を用いて分枝マーカーを用いた連鎖解析を試みたが、予期に反して分離の歪みが激しく今後の材料確保のための後代系統の選抜に留めるのみで解析を断念せざるを得なかった。分離世代の一部組換え個体を用いたバイオマス(茎葉重)の測定では、有意な増大が認められたことから、今後原因遺伝子の同定方法を検討していく予定である。 一方、バイオマスに関わるQTLを同定する目的で前年度用いた組み合わせと同一の分離集団(コシヒカリ/ST1)を用いて、草型に関係する収穫指数を対象形質にQTL解析を行った結果、本形質を支配するQTLが1株穂重や1株茎葉重が検出されたQTLの座乗領域とは異なり、前年度第3染色体上に検出された穂数のQTL領域と重なって存在することが明らかになった。 バイオマスに関係する茎葉部の細胞壁の改変については、引き続き材料の育成を進めるとともに、新規の変異体の解析を行った。
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