研究課題/領域番号 |
21380005
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宅見 薫雄 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50249166)
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キーワード | 異質倍数化 / 生殖隔離 / 種間雑種 / 雑種致死 / 補足遺伝子 |
研究概要 |
本研究は、パンコムギの直接の祖先野生種で豊富な自然変異を集団中に有するタルホコムギのもつ遺伝子をパンコムギ育種に導入する際に問題となる、雑種致死や雑種弱勢の発生に関与する遺伝子座について、これらに密接に連鎖する分子マーカーの同定を目指すものである。平成23年度は、これまでに引き続き、typeIIネクローシスのDゲノムの原因遺伝子であるNet2とハイブリッドクロロシスのDゲノムの原因遺伝子であるHchについて、F_2集団のサイズを300個体としてマップの高密度化を進めた。Net2については緊密に連鎖するSNPマーカーを1つ同定し、Hch1については2つのSSRマーカーによって2.9cMと1.5cMの距離で挟み込めた。また、ハイブリッドクロロシスには症状の軽い系統と重い症状を示す雑種系統が存在するが、同座性検定の結果、両者のF_1、及びF_2集団で野生型が出現しなかったことから、同一の遺伝子座に原因遺伝子が存在することが示唆された。Net2やHch1周辺の分子マーカーとさらに充実させるために、タルホコムギ2系統の幼苗葉を用いてRNAseq解析を行い、2つの系統間でのSNPを大量に検出した。これらのSNPはマーカーとして連鎖地図上に位置づけることができ、オオムギのゲノム情報とリンクさせることで、Net2やHch1に連鎖したマーカーを推定することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定していた生殖隔離遺伝子についてはおおむね解析が終わり、特にNet2とHch1に関して連鎖地図を充実させる段階に入った。コムギでは基本的には既報のSSRマーカーしか使えるマーカーシステムが無かったが、RNAseq解析から大量のSNPを抽出することができ、他の作物のゲノム情報やコムギのsurveyシークエンスデータの利用によって、より緊密に連鎖したマーカー開発ができるようになった。そのため期間内にNet2とHch1の高密度連鎖地図を作成する見通しが立った。
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今後の研究の推進方策 |
コムギ雑種成立の生殖隔離遺伝子であるNet2とHch1の高密度連鎖地図作成の目処が立ったことから、実際の遺伝子単離に向けた取り組みを始める必要がある。具体的には更なる高密度化とマップ集団の大規模化が必要で、そのために多検体を処理するシステムの導入が不可欠である。平成23年度に取得したSNP情報も十分ではなく、さらに他の組織を用いることでマーカー数の増大をはかる必要がある。SNP情報については、今年度の知見を参照できるため実現可能である。Referenceゲノムの解読が終わっていないコムギにおいては、目的領域のBACクローンの選抜と整列化が遺伝子単離には必要となるが、共同研究によってBACライブラリーのスクリーニングに向けた準備を進めていきたいと考えている。
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