本研究では、バレイショ乾燥抵抗性に関係する土壌硬盤層に対する根貫通能力(根貫通力)と乾燥土壌条件下での個々の根の水分吸収能力(根吸水力)に優れた品種を開発するための基礎的知見を得る目的で、研究代表者が開発した検定ポットと根吸水力測定方法を用いて、オランダのワーゲニンゲン大学が開発した、染色体におけるDNA配置を明らかにしたバレイショ集団(マップ集団)と国内バレイショ遺伝資源での両形質の遺伝変異を明らかにする。本研究は、北海道大学の研究代表者とワーゲニンゲン大学の海外共同研究者との国際共同研究として実施する。本年度に得られた成果の概要は下記の通りである。 1.ポット栽培し、萠芽後35日目(開花始め)に調査したマップ集団(101系統、親2系統を含む)において、根長、根乾物重および節根数に大きな遺伝差異が認められた。QTL解析では、LOD値20の大きなQTLが5番染色体の中央付近に検出された。 2.十分な給水条件下でポット栽培した国内遺伝子源9品種において、毎日のポット重量変化から推定した蒸散速度は、測定日の大気飽差によって増減し、その増減の程度に有意な品種間差異が認められた。根量の差異とは有意な相関関係が認められなかったことから、土壌水分が十分な条件下では蒸散速度の品種間差異は地上部形質、例えば葉とか茎の通導コンダクタンスにおける品種間差異が影響するものと推察された。 3.圃場で乾燥と適湿の2水分条件下で栽培した根量の異なる2品種において、新型センサーを用いて測定した深さ60cmと100cmでの土壌水分圧の吸水限界値は-200~-300kPaであり、根量の多い(根長密度の高い)品種では吸水限界値が低く、深い土壌層からの吸水量が大きかった。このことから、根量は土壌乾燥条件下での吸水能力と密接に関係していると推察された。
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