本研究では、バレイショ乾燥抵抗性に関係する根系の遺伝的変異と染色体領域(QTL)を明らかにする目的で、オランダのワーゲニンゲン大学が開発した、染色体におけるDNA配置を明らかにしたバレイショ2倍体のマップ集団(CxE集団)をポットおよび圃場で栽培し、根量および地上部および塊茎形質との関係を調査し、下記の成果を得た。 1.マップ集団をポット栽培し、萠芽後35日目(開花始め)に調査した根長および各器官乾物重のデータについてQTL解析を行った。根長および根重では両年ともにLOD値20以上の顕著なQTLが5番染色体の上部に検出された。また、昨年度の実験で根量の異なった10系統を慣行条件下で圃場栽培し、萌芽後35日目に根重を調査した。ポットと圃場の根重には高い正の相関関係が認められ、ポットでの系統間差異は圃場条件下でも類似して認められることを確認した。これらの結果に基づき、バレイショにおいて根量の遺伝的差異を支配する遺伝子が5番目染色体上部に存在することを、世界で始めて推定できた。 2.マップ集団を天水条件下と乾燥条件下(雨よけハウスを設置)で圃場栽培し、生育期間(早晩性、植え付けから茎葉黄変期までの期間)を2年間調査した。生育期間はいずれの年次でも集団内で大きな変異を示し、年次間相関も高かった。両年ともにポットでの根量と高い正の相関関係を示し、根量と同じく5番染色体の上部にLOD値が20程度の顕著なQTLが早晩性についても検出された。このため、上記1で明らかにした根量の遺伝的変異を支配するQTLが早晩性も支配しているものと推定した。 3.圃場で栽培したマップ集団の塊茎乾物収量は、天水条件下ではポット栽培での根量および圃場での早晩性と有意な正の相関関係を示したが、乾燥条件下では有意な相関関係が認められなかった。これはこの集団が夏期の高温下で発病する夏疫病に特異的に弱いためと考えられた。
|