近代育種におけるバイオマスの増加は専ら雑種強勢の利用によってもたらされてきたといわれているように、雑種強勢は作物の生産性の向上に重要な意味を持つが、雑種強勢の機構そのものについては未だほとんど分かっていない。我々はこの問題を解明するため、熱研2号(ハイブリッドライス用のジャポニカ品種)と伽〓(韓国の改良型インディカ品種)の組み合わせによる組換え近交系を育成してきた。ただし、染色体のほとんどがホモ化している組換え近交系ではヘテロ接合時のQTLの作用を解析できないので、組換え近交系に、熱研2号、伽耶をそれぞれ戻し交配する(それぞれの集団を/Nk、/Gaとする)ことで、染色体の約半分の領域がヘテロ接合状態にある個体の集団を作り、本研究科付属農場(西東京市)で栽培した。出穂後40~45日目に総バイオマス、収量および各種収量構成要素を測定した。両親(熱研2号、伽耶)とF1を比べると、F1は収量がそれぞれより66%、27%高く、顕著な雑種強勢を示した。さらに、戻し交配した集団(特に/Ga)の中には、F1の収量を凌ぐ系統が多数存在していた。収最のQTLをマッピングしたところ、/Nkからは第1、3染色体に、/Gaからは、第2、3、8染色体に検出された。また、QTLレベルでの超優性は認められず、雑種強勢は部分優性の集積によって生じているものと考えられた。なお、収量のQTLのなかには、ヘテロ型でなく一方の親のホモ型となった場合に収量が増加するQTLがいくつか存在したが、このようなQTLのために上記したF1の収量を凌ぐ系統が出現していることも明らかとなった。
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