研究概要 |
多収性・高バイオマス生産性を備えた食用、飼料用、バイオエネルギー用など多用途の水稲品種を開発するためには、第1に極強稈性の付与による倒伏抵抗性の飛躍的な向上が不可欠となる。強稈性は複数の遺伝子が関与する量的形質であり、量的形質遺伝子座(QTL)解析により、染色体上の遺伝子座を特定し、個々の遺伝子座の準同質遺伝子系統(NIL)を作出してその生理機能を解析することにより、太稈性や強稈質に関わる分子機構、遺伝子を特定することができる。本年度は、強稈水稲品種の強稈性に関する遺伝子座の原因遺伝子を単離するため、コシヒカリと強桿品種中国117号との第3染色体候補領域が分離する組換え固定系統を用いて、ファインマッピングとマップベースクローニングを行った。その結果,ファインマッピングによって第3染色体の原因遺伝子1つに絞りこみ、遺伝子を単離した。この原因遺伝子を含む染色体領域をもつNILを用いて、強稈性を評価した結果,このNILはコシヒカリより基部節間の稗が太くなることを確認した。さらに、成長点での稈の遣伝子の発現を解析した結果、コシヒカリに比べてNILは中国117号と同様に、この遺伝子の発現量が多いことがわかった。強稈質性では、強稈質と密接に関係する形質に着目し、強稈質遺伝子座の染色体領域をもつ置換系統を用いて、曲げ応力、稈の外周部にある皮層繊維組織の構造の解析を行った。その結果、第8,11染色体に曲げ応力を高める遺伝子座を推定し、第11染色体は曲げ応力とともに、皮層繊維組織を厚くする機能をもつ遺伝子座であることを明らかにした。稈外径を大きくする遺伝子座、皮層繊維組織を厚くする遺伝子座を集積することによって、著しく強稈性を高める品種を効率的に開発することが可能であることを示した。
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