研究概要 |
窒素固定能力が強化されているミヤコグサenf1変異体の原因遺伝子の候補のうち,遺伝子A(新規性の確保のため現段階では遺伝子名を伏せる)と遺伝子B(新規性の確保のため現段階では遺伝子名を伏せる)について,それらが変異したダイズの選抜を試みた.選抜には佐賀大学に存在するダイズミュータントライブラリーを用い,TILLING法を適用した.その結果,遺伝子Aについては,複数の変異体候補を得ることができたが,いずれもイントロン領域に変異を持っており,エクソン領域にミスセンス変異を見出すことができなかった.遺伝子Bについては現在も継続して選抜をおこなっている. また,窒素固定に影響を与える遺伝子としてミヤコグサのsen1遺伝子が報告されているが,sen1遺伝子の塩基配列の違いが窒素固定活性に直接的に影響を与えている可能性が考えられたので,数十のダイズ品種についてsen1遺伝子の塩基配列を比較した.データベース解析の結果からダイズには少なくとも4つのsen1遺伝子が存在することが明らかとなったため,それらすべてについて塩基配列の決定をおこなっている.そして現在までのところ,その内の1つについては日本で広く普及しているダイズ品種において,ミスセンス変異が生じていることを突き止めた. ABAスクリーニングによって選抜したBayをバックグラウンドとする高窒素固定能を示すダイズ変異体について,平成23年度も圃場試験をおこない,生産性に関する再現性を調査した.その結果複数の変異系統においてオリジナル品種よりも高い収量を示すことが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミヤコグサenf1変異体の原因遺伝子の探索について、原因遺伝子候補の絞り込みという目的はほぼ達成された.また,窒素固定活性に影響を与える遺伝子の同定については,QTL解析をおこなったが,sen1遺伝子がその候補となることを示した.そしてダイズの有力品種の中にsen1遺伝子の塩基配列に変異を持つものを見出すことに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
共生窒素固定能強化の分子基盤を理解するためには,第一にenf1費遺伝子を完全に同定しなければならない.そのためには相補実験を完了させることが肝要である.また,その遺伝子またはその下流にあって,直接的に窒素固定活性に影響を与える遺伝子について,ダイズにおける変異体の選抜を加速させ,そういった変異体における共生窒素固定能を評価するとともに,圃場試験をおこない,収量が増加しているかどうかを確認しなければならない.
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