研究概要 |
ウイルス誘導性ジーンサイレンシング(VIGS)は、宿主範囲の広いウイルスをベクターとして用い、培養を経ずに、任意の時期と部位を選んで遺伝子の発現の抑制が可能であることから、従来の形質転換における問題点を解決し得るファンクショナルゲノミクスの手法である。しかし、トマトを除くと園芸作物へのVIGSの適用は少ない。また、従来の対象遺伝子は、VIGSが植物病理学の分野で開発された背景と関連して、耐病性に関わるものが多く、園芸作物の品質等に資する研究は希少である。そこで初年度は、種々の主要園芸作物におけるVIGSの汎用化によるファンクショナルゲノミクスの推進を目的として、主に感染マーカー遺伝子のVIGSによる導入を行って,その汎用性を検証した。現在利用されているVIGS用のベクターの中では、Cucumber mosaic virus (CMV)およびTobacco rattle virus (TRV)を利用したベクターが汎用性が高いと考えられる。特にCMVは100科以上1,000種を超える幅広い宿主範囲をもつといわれており、ナス科、アブラナ科、キク科など園芸学的に重要な科を含む様々な植物に感染し得ることが実験的に報告されている。そこで初年度はまず、いくつかの科に属する主要園芸作物において、CMVベクターの利用の可否を調べて汎用性の検証を行うことを中心として研究を進めた。対象遺伝子はマーカー遺伝子として実績のあるフィトエン不飽和化酵素を用い、接種は傷接種法(CMV)によって行った。その結果、ウイルスを増殖するためのタバコへの感染と移行、さらにはそのタバコから抽出したウイルスを利用してナス科に属する野菜への感染と移行が、ウエスタンブロットによって確認された。またサイレンシングの対象とする有用遺伝子の検討も行った。
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