研究概要 |
本研究課題はクリにおけるゲノムレベルの基礎的知見の獲得とゲノム研究基盤の整備を目指している.本年度は,クリ連鎖地図作製のための植物材料としてコンテナで栽培していたクリ種間交雑'石鎚'×モーパングリおよびモーパングリ×'石鎚'由来の雑種集団を圃場に展開し,早期開花性,樹高,樹形,果実特性について評価した.さらに同集団において既報のSSRマーカー遺伝子型を明らかにした.両親で多型を示す22座の核SSRマーカーを用いて雑種性を検討したところ'石鎚'×モーパングリ由来の94個体およびモーパングリ×'石鎚'由来の9個体が種間雑種と推定された.雑種性が確認された個体の形質調査の結果,樹高については品種間雑種で38.9~91.3cm(平均63.2cm,CV=26.4%)であるのに対し,種間雑種では14.7~72.2cm(平均43.4cm,CV=29.9%)とより大きなバラツキが認められた.またシュート数についても,品種間雑種で1~3本(平均1.31本),種間雑種で1~8本(平均2.94本)と両者の間に大きな差が見られた.これらの結果,モーパングリが持つ樹形や矮性が種間雑種に遺伝していることが明らかになった. 一方,新たに葉緑体SSRを用いてクリ野生種およびニホングリ品種におけるマーカー遺伝子型のデータベースを整備した.また,cDNAライブラリーを作製するための材料の採取とRNAの調整を行った. さらに間接経費の一部を活用して本研究課題を推進するためのシンポジウム「次世代シークエンサーとDNA塩基配列情報の農業研究への展開-果樹ゲノム研究から品種識別まで-」を主催した.
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