トマトでの多収生産に関する要因を多面的に解析し、環境制御・生育制御を最適化することで、トマトの生産量を最大限に引き出す日本型栽培プラットホームの策定を目指して研究を実施した。これまでの成果として、四季が存在する日本では季節ごとに品種を変える低段密植栽培が適しており、移動式1段密植栽培によって生産量を著しく高められる可能性があることを示してきた。本年度は、移動式栽培システムにおいて周年生産を達成するための生育予測法の開発ならびにトマトの生育を揃えるための育苗法について検討した。 生育予測では、定植~開花に要する日数は平均で25日であったが、季節によって10日ほど早まったり、遅くなったりすることが分かった。また、各生育ステージまでの積算温度は、定植~開花では平均565℃・日(変動係数9.4%)であり、冬に定植した株では64~97℃・日程度高かった。有効積算温度帯を設定した結果、定植~開花では下限温度を12.5℃、上限温度を26.5℃にすることで変動係数が7.0%と最も低くなり、決定係数も高まった。 育苗では、第一花房着生節位は、明暗期温度が高いほど高位の節に着生することが分かった。第一花房着生節位の揃いは明暗期温度25 / 20℃のときに良く、第9節に76%が着生し、変動係数は5.4%であった。また明暗期温度が低いほど第一花房における着花数は増加し、明暗期温度22 / 16℃では8.8個、明暗期温度25 / 20℃では5.4個となった。定植時における苗の外観は育苗時の明暗期温度によって大きく異なったが、定植時の光合成速度に有意な差はなかった。また、摘心後の苗の外観および収量においても有意な差はなかった。 本成果は、大規模トマト生産施設における移動ベンチ式1段密植栽培システムでの周年生産において重要な技術であり、多収生産への寄与が期待される。
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