(1)「歴史的風致」概念の整理および分析・評価指標の検討 歴史的風致に関わる内外の概念、手法について広く整理するともに、本研究での概念規定にかかわる基礎検討を行った。また事例調査において社寺の立地と自然環境との関連に着目した景観構造を把握するための分析・評価指標を、造園学、景観工学、都市工学、自然および人文地理学、宗教学、文化人類学等の既往研究を横断的に参照しながら検討した。 (2)対象地(高格の社寺)の選定 わが国を代表する神社・寺院のうち、周辺の地域・まちなみとの関わりにおいても重要と考えられる候補地を検討し、絞込みを行った。社格の目安としては戦前期の旧社格から旧官幣大社~国幣中社など、寺院では本山格のものを想定し、本年度の調査対象を宇佐八幡官(大分県)、大和神社(奈良県)、広瀬神社(奈良県)、金刀比羅神社(香川県)、善通寺(香川県)に選定した。 (3)景観構造調査 上記5箇所の事例対象地において、現地踏査により、地形、水系、森林、都市施設(道路、その他社寺、公共施設等)の配置などの確認とともに、主要拠点からの景観の記録を行い、景観構造解析のための基礎情報を収集した。特に社寺の立地特性を特に自然環境条件との関係から把握するために、「遥拝」軸上の縦断線形の把握に重点をおいて調査を行った。遥拝軸に沿って参道から社殿後背地に向かう方向おいて山稜のあるケース(宇佐八幡宮、金刀比羅神社、善通寺)と河川合流点などの低湿地があるケース(大和神社、広瀬神社)が基本的に確認された。さらに遥拝軸に沿って社殿から参道、鳥居に向かう逆方向の延長上に別の山稜があるケース(大和神社、金刀比羅神社)も確認され、今後の解析方法の設定において修正の必要性を求める検討課題となる情報を得た。
|