研究概要 |
1.トルコギキョウ花冠形態の定量化 野生種含めた合計122系統・品種のトルコギキョウにおいて,花弁の湾曲と二次元形状を定量的に評価した.花弁の湾曲は,花弁を側面から見た花弁中央脈の背軸面に沿った曲線をトレースし,得られたカーブの輪郭をフーリエ係数に変換して,これらを主成分分析により解析した.花弁湾曲に関する第1,2主成分は,それぞれ花の開き,花弁中間部の内側へのカーブを評価していた.花弁形状に関する第1,2主成分は,それぞれ,花弁の横幅,花弁の重心を評価していた.さらに,花弁湾曲を表す主成分,および花弁形状を表す主成分を用いて,自己組織マップによって全品種・系統のクラスタリングを行った.その結果,4つの典型的なグループ,トールカップ型,ボウル型,ロート型,トランペット型が見出された.花弁湾曲の第2主成分は,花弁形状の第1主成分と高い相関があり,トールカップ型とボウル型の花冠の花弁湾曲形成は,横幅の広い花弁と関連が認められた. 2.マイクロアレイによる遺伝子発現解析 トルコギキョウの花弁から抽出したRNAを次世代シークエンサーにより解析し,約6万コンティグからなる転写産物配列データを得た.得られた配列データをもとにマイクロアレイを作成して,トルコギキョウの花弁の発達にともなう遺伝子発現の変化を調査した.マイクロアレイ上に載せた全遺伝子の約20%において,FDR5%水準で有意な発現の変化が認められた。発現の変化が認められた遺伝子について,GSEA (GeneSetEnrichmentAnalysis)により解析した結果,ステージ後半で発現が高い遺伝子セットには,オーキシン応答,ジャスモン酸応答,細胞壁,アントシアニン代謝,テルペノイド代謝,脂質代謝に関連する遺伝子が多く含まれ,発現が低下する遺伝子セットには,フラボノイド代謝,細胞壁関連の遺伝子が多く含まれた.
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