研究概要 |
1.コンピュータシミュレーションによる花弁立体形態形成機構の解析 花の立体的な形態と各花弁の平面的な形態との関係を,CGを用いてシミュレーションすることを試みた.花弁の平面形態をスキャナーで取り込み,その形態を格子状の質点-バネモデルで表した.バネの伸長速度を場所により異なるように設定し,経時的な立体形態の変化をシミュレーションした.現段階のシミュレーションでは,成長の早い部分に皺ができるなどするため,パラメータの設定を改良する必要があるが,成長の早い部分が湾曲をする様子が再現された. 2.遺伝子発現の花弁内における空間的分布の解析 これまでの実験の結果,花弁が湾曲する部分は,その周囲と比べて伸長速度が速いことが明らかとなった.このような花弁内における不均一な成長の原因となっている遺伝子の発現パターンの特徴を明らかにするため,トルコギキョウ花弁から細胞壁の伸展に関与する酵素の遺伝子のDNA塩基配列を多数決定することを試みた.細胞壁の伸展の制御に関与するとされるエクスパンシン遺伝子のファミリーを,縮重プライマーを利用したPCRにより増幅し,そのDNA塩基配列を決定した.決定した数十配列をアセンブルした結果,合計5種類のエクスパンシン遺伝子の配列が得られた.また,前年度に作成したトルコギキョウ花弁におけるESTデータベースを基に,XTHなど多数の細胞壁修飾酵素のDNA塩基配列を決定した. また,ゲノム配列から遺伝子情報を得るため,自家交配を繰り返した2系統のトルコギキョウについて,ゲノム配列のショットガンシークエンシングを行った.それぞれの系統について,40Gbの塩基配列を決定した.これらについて,アセンブルを行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子ファミリーの解析が必要であるが,トルコギキョウではゲノム情報がこれまで利用できず,解析する遺伝子を得ることが難しかった.しかし,次世代シークエンサが利用できるようになったため,ESTデータベースおよびゲノム配列情報を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた遺伝子のDNA塩基配列,ESTデータベースおよびゲノム情報を基に,細胞伸長の制御に関与する遺伝子を選定し,異なる花型の品種間で,花弁内における発現パターンの空間分布を比較する.また,次世代シークエンサを用いたRNA-seq解析も検討する.
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