研究課題
本研究の過程で、世界で初めてダリアからPSTVdを分離した。dahlia分離株は、Intermediate株と比較して9塩基の変異を有し、トマトに弱毒性の病原性を有していた。この弱毒株を実験系に加え、病原性の異なるPSTVdに感染したトマトに蓄積するsrPSTVdの大規模塩基配列解析を実施した。その結果、Intermediate(強毒型)とdahlia(弱毒型)に感染したトマトでは、srPSTVdを生じるホットスポットに共通性があり、茎と葉でパターンに大きな違いはなかったが、部位により生成量に違いが認められた。次に、PSTVdに対する感受性の異なるトマト2品種(RutgersとMoneymaker)及びPSTVd由来の配列を遺伝子導入したトマト(Moneymaker)用いて、PSTVd感染トマト葉のマイクロアレイ発現解析を行った。その結果、ジベレリンなど複数の植物ホルモン生合成遺伝子群の発現量に変化が確認された。PSTVd感染で発現量が低下したトマト遺伝子の中で、PSTVd配列と21塩基の相同性配列を有するものを検索した結果、gibberellinβ-hydroxylaseなど複数の遺伝子が特定された。そこで、昨年度取得したsrPSTVdの大規模塩基配列データに含まれるmicroRNAの出現頻度を再分析した結果、PSTVd感染で複数のmicroRNA発現量に変動が認められ、microRNA経路を介した植物ホルモン生合成経路の阻害が生じている可能性が示唆された。PSTVd-ヘアピンRNAを発現する形質転換トマトとN.benthamianaの形質転換体系統を選抜・育成し、PSTVdのほぼ全長とsrPSTVd-257aのヘアピンRNAを発現するN.benthamina系統を得た。両系統共にPSTVdの感染・増殖を阻害し、RNAサイレンシングを利用した新規なウイロイド抵抗性戦略の可能性が示唆された。一方、それぞれの形質転換体系統を選抜する過程で、ウイロイド感染に類似した矮化症状、茎長部分の水浸状化(ガラス化)、発芽(発根)障害などを示す系統が高頻度で観察された。導入したPSTVd由来のヘアピンRNAにより誘導されるRNAサイレンシングにより、植物側の植物ホルモン生合成関連遺伝子発現或はmicroRNA代謝経路に悪影響が生じた可能性が示唆された。
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