研究課題
微生物に特徴的な分子に保存された一部の分子パターン(Microbe-Associated Molecular Patterns,MAMP)は、動植物に認識され、防御応答を誘導する。動物においてはToll-like ReceptorsファミリーがこれらMAMPの受容体として機能することが判明している。一方、植物においてはグルカンやキチンといった糖MAMPに対する受容体とフラジェリンや翻訳伸長因子のペプチドMAMPに対する数種の受容体しか同定されておらず、植物防御応答機構の解明にはその他多くのMAMPに対応する受容体の解明が不可欠である。これまでに同定された3つのペプチドMAMPに対する受容体は細胞外にロイシンリッチリピート(LRR)ドメインを有し、2つは細胞内にタンパク質リン酸化酵素(PK)ドメインを有している。本研究ではシロイヌナズナに存在する全ての受容体様キナーゼ遺伝子を対象に、まだ未同定のMAMP受容体を同定すること、さらにMAMPのシグナル伝達に必要な新規受容体様キナーゼの同定を目指した。具体的なMAMPとしてはPseudomonas syringaeのハーピンとタイプ4線毛ピリンを取り上げた。ハーピンについては大腸菌を用いて組換えタンパク質として精製し、LRR-PKドメインをコードする様々なエリシター応答性遺伝子のタグラインに対して感受性を解析した。しかしながら、明らかに非感受性を示した変異株は見出されなかった.タイプ4線毛はN-末端のアミノ酸配列が高く保存されており、ピリンの変異株をシロイヌナズナに接種すると、野生株の接種に比べ防御応答の誘導の程度が低かったため、ピリンがMAMPである可能性は高かったが、化学合成ペプチド、並びに組換えピリンはいずれも精製に至らず、Agrobacteriumを用いたピリンの一過的発現も有効な実験系とはならなかった。
すべて 2012 2011
すべて 学会発表 (6件) 図書 (3件)