研究概要 |
植物のウイルス病には有効な薬剤がなく,抵抗性品種の利用が主な防除手段であるが,変異ウイルスによる抵抗性の打破が問題となっている。変異ウイルスによって打破されることなく,持続的に利用可能な抵抗性遺伝子の開発を目標とし,本研究では,抵抗性タンパク質による病原体認識の分子機構を明らかにすることを目的とする。既にクローン化したカプシクム属植物のトバモウイルス抵抗性遺伝子,L1,L2,L2b,L3およびL4は,それぞれ対立遺伝子の関係にあり,付された番号が大きいほど広い病原体認識範囲を示すCC-NB-ARC-LRR型の抵抗性タンパク質をコードし,トバモウイルスの外被タンパク質(CP)を認識する。これらのキメラ解析および点変異導入によってLRRドメインがトバモウイルス特異性および認識範囲を規定していること,これらの1127番目のアミノ酸が認識範囲の決定に特に重要であること,およびそれ以外のアミノ酸配列も認識範囲に影響することを明らかにした。ヘマグルチニン(HA)タグを挿入したL3タンパク質(HA-L3)が機能すること、抗HA抗体によってその蛋白質を検出できること,L3およびこれとL1,L2またはL4とのキメラLタンパク質をトバモウイルスCPと共発現させた植物において,CPがLタンパク質と免疫共沈すること,Lタンパク質と各病原型トバモウイルスCPとの物理的な相互作用と抵抗反応との間に相関があることを明らかにした。また,CCおよび/またはNB-ARC領域も認識範囲の決定に与ることが示唆された。Lタンパク質によるトバモウイルスCP認識に関与する第三の因子を同定することを目的に,ベンサミアーナタバコのcDNAライブラリーをLタンパク質のCC-NB-ARC領域をベイトとした酵母ツーハイブリッドスクリーニングに供し,これまでに数個の候補クローンを得た。
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