研究概要 |
植物のウイルス病には有効な薬剤がなく、抵抗性品種の利用が主な防除手段であるが、変異ウイルスによる抵抗性の打破が問題となっている。変異ウイルスによって打破されることなく、持続的に利用可能な抵抗性遺伝子の開発を目標とし、本研究では抵抗性タンパク質による病原体認識の分子機構を明らかにすることを目的とする。既にクローン化したカプシクム属植物のトバモウイルス抵抗性遺伝子、L1、L2、L2b、L3およびL4は、それぞれ対立遺伝子の関係にあり,付された番号が大きいほど広い病原体認識範囲を示すCC-NB-ARC-LRR型の抵抗性タンパク質をコードし,トバモウイルスの外被タンパク質(CP)を認識する。前年度、L蛋白質のLRRドメインがトバモウイルスCPに対する特異性と認識範囲およびL蛋白質-CP間の物理的な相互作用の程度を規定していることを明らかにした。今年度、この相互作用にはLRRドメインだけでは不十分であることを見いだした。CCおよび/またはNB-ARC領域がトバモウイルスCPとの相互作用に関与する機構として第三のタンパク質を介した間接的相互作用が有力であることから、そのような第三の因子を同定することを目的に酵母ツーハイブリッドスクリーニングを行なった。ベンサミアーナタバコのcDNAライブラリーを共形質転換法によってスクリーニングした場合、得られた候補に重複はなく、植物細胞における免疫共沈実験においても相互作用は証明されなかった。そこでスクリーニング効率を高めるために接合法を用いた。その結果、2種類のタンパク質が、独立した4回のスクリーニングにおいて合計5回以上陽性クローンとして得られた。うち一種類については、トウガラシのcDNAライブラリーからオルソログが相互作用陽性クローンとして得られ、相互作用パートナーとして有力なものと考えられた。
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