研究課題
本研究では抵抗性タンパク質による病原体認識の分子機構を明らかにすることを目的とする。既にクローン化したカプシクム属植物のトバモウイルス抵抗性遺伝子、L1、L2、L2b、L3およびL4は、それぞれ対立遺伝子の関係にあり,付された番号が大きいほど広い病原体認識範囲を示すCC-NB-ARC-LRR型の抵抗性タンパク質をコードし,トバモウイルスの外被タンパク質(CP)を認識する。L蛋白質のLRRドメインがトバモウイルスCPに対する特異性と認識範囲を規定していること、認識の成否はL蛋白質とCPとの間の物理的な相互作用の強さに依存すること、この相互作用には、CC-NB-ARCおよびLRRドメインのすべてが必要とされることをこれまでに明らかにした。認識範囲を規定するLRR以外にも、CCおよび/またはNB-ARC領域がCPと直接的または間接的にLタンパク質CP間の相互作用に寄与することが示唆された。その分子機構として第三のタンパク質を介した間接的相互作用を想定し、酵母ツーハイブリッドスクリーニングによって2種類のL相互作用タンパク質、LIPM1およびLIPM2のcDMAを単離した。LIPM2はThylakoid Formation 1 (ThF1)として知られるタンパク質であり、葉緑体の形成や糖代謝シグナル伝達および病害に対する感受性に関与することが知られている。一方,LIPM1は機能未知のタンパク質である。これらのタンパク質の発現をウイルス誘導性ジーンサイレンシグによって抑制した植物におけるLタンパク質の機能を一過性発現実験によって解析した。LIPM2発現抑制によってLタンパク質に依存した抵抗反応の指標としての細胞死が有意に早まることが明らかになった。また、LIPM1発現抑制植物においても細胞死が若干早まる傾向が認められた。これらの結果から、LIPM1および2がLタンパク質によるトバモウイルスCP認識に関与していることが示唆された。
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Japanese Agricultural Research Quarterly
巻: 46 ページ: 123-128
植物防疫
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