研究課題
現在、地球上で記載さえている動物種の約72%が昆虫である。種数では全昆虫の2%にすぎない社会性昆虫が、生物量では5割以上となり、地球上で最も繁栄しているともいえる。繁栄した要因として社会システムを獲得したことを挙げることができるが、病原微生物に対してそのシステムがどのように機能しているかについては不明の点が多い。本研究は, 病原微生物に対する社会システム(社会性昆虫特有の防御メカニズム)の全体像を明らかにすることを目的としている。集団飼育における病原菌の動向を詳細に調査するためにMetarhizium anisopliae T8株の病原力を調査した。イエシロアリ職蟻を単独飼育した場合、数個の分生子の付着によりシロアリを致死させることが明らかになった。なお、集団飼育した場合にはイエシロアリの抵抗力は約100倍増強される。病原菌接種個体と非接種個体を混合飼育(5:5)した場合、非接種個体への付着量はおよそ3時間後に最大となり、その後減少していった。しかし、24時間後でも、病原菌接種個体と非接種個体には致死量を上回る分生子が付着しており、5日目で接種個体と非接種個体の両者とも全滅した。接種個体と非接種個体が3:7区および1:9区においても、非接種個体への水平伝播量は6時間で最大を迎えたが、12時間後には0個まで減少した。7日後における非接種個体の死亡率2割であった。しかし、水平伝搬量の最大時に(混合飼育3~6時間後)、非接種個体を化学的処理(低濃度イミダクロプリド処理)または物理的処理(単独飼育)により社会性行動を抑制した結果、1:9区においても非接種個体の全てが死亡した。以上のことよりグルーミング(ネストメイトによる病原菌の除去)とネストメイトへの病原菌の水平伝搬が同時に起きていることが明らかになった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLOS ONE
巻: 7 ページ: e4741
10:1371