昆虫ウイルス感染幼虫のホルモン動態等の生理的特徴を明らかにし、昆虫ウイルスがコードする昆虫の内分泌操作にかかわる遺伝子とその機能を明らかにすることにより、昆虫ウイルスによる宿主昆虫の内分泌系操作のメカニスム、ひいては、発育制御のメカニスムを明らかにすることを目的としている。本年度は、候補遺伝子をノックアウトした組み換えウイルスを作成し、野生型ウイルスと宿主の発育への影響や生理的な影響を比較し、当該遺伝子が宿主の発育制御に重要な働きを持つことを示すことを目的とした。 これまでの研究成果から抽出した候補遺伝子の読みわくに緑色蛍光タンパク質を挿入したトランスファーベクターを作成し、昆虫ポックスウイルス感染細胞にトランスフェクションすることにより、前年度に開発したIn Vitro系を用いて候補遺伝子を外来遺伝子で組み換えたウイルスを作成することに成功した。野生型ウイルスに感染した幼虫がすべて幼虫のまま死亡する条件でも、この組み換えウイルスに感染すると、ワンダリング行動を示し、蛹室を作るなど正常に蛹になる前の行動を示した後、蛹-幼虫中間体や蛹で死亡する個体が数多く表れた。また、各々のウイルスに感染した虫の生理的特徴を解析することにより、候補として解析した遺伝子は昆虫のホルモンタイターを撹乱し、正常な内分泌状態を崩壊させることにより、宿主昆虫の成長を制御していることが強く示唆された。
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