研究概要 |
薬剤抵抗性モニタリングについては,東アジア地域トビイロウンカのイミダクロプリドに対するLD50値は2006~09年にかけて増加し続けたが,2010年はやや低下した。また,イミダクロプリドと他のネオニコチノイド4剤のLD50値との簡には有意な相関があり,相関係数はチアメトキサムとクロチアニジンで高く,ジノテフランとニテンピラムでは低いことを明らかにした。 ネオニコチノイド剤抵抗性については,標的分子であるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)サブユニットの遺伝子配列をトビイロウンカで12種類明らかにした。イミダクロプリドの結合は抵抗性・感受性系統間で大きな違いはなかった。一方,分解酵素P450の遺伝子発現は両系統間で大きく異なり、特にCYP6ER1遺伝子の発現が抵抗性系統で極めて高く,この酵素がイミダクロプリドの抵抗性に関わっていることが強く示唆された。 nAChRの構造変化解析については,ヒヨコα7 nAChRの1oop BにおけるY151S変異に相同のアミノ酸置換を導入してイミダクロプリドに対する応答を測定し,本受容体の当該アミノ酸置換によってイミダクロプリド感受性は変化しないことを明らかにした。一方,nAChRのclassical loopとは別の位置に昆虫特有の塩基性アミノ酸が存在することから,α7nAChRに相同の塩基性アミノ酸を導入したところ,受容体のネオニコチノイド感受性が上昇することを見出した。 広域移動解析については,ベトナム南部のトビイロウンカの発生と移動実態を予察灯データと衛星データを用いて解析した結果,約30日間隔で発生ピークがあり,それらはイネの収穫地域で増殖した長翅成虫であった。この解析と流跡線解析から,移出個体群は西からの季節風を利用し100km程度移動したことが推定できた。この距離はベトナム北部個体群に比べ1/10以下の値であった。
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