1.昨年度に引き続きホールマウントin situハイブリダイゼーションにより、カイコ神経ペプチド受容体の中枢神経系における発現細胞のマッピングを試みた。中枢神経系で発現する受容体のうち、Adipokinetic hormone/corazonin-related peptide(ACP)受容体、コラゾニン受容体、およびLeucine-Rich Repeat-Containing G Protein-Coupled Receptor(LGR)は脳の神経分泌細胞で発現することが確認された。特に、ACP受容体はボンビキシン産生細胞で発現が確認されたことから、ACPがボンビキシンの合成・分泌の制御に関わる可能性が示唆された。 2.神経ペプチドの産生細胞および輸送経路を特定するために、IMFアミドペプチドやCAPAなどのカイコ神経ペプチドに対するマウス抗体を作製した。これらの抗体はホールマウントin situハイブリダイゼーションによりmRNAの発現シグナルが検出された中枢神経系上の細胞を染色したことから、それぞれのペプチドを特異的に認識することが確認された。 3.ホールマウントin situハイブリダイゼーションおよび免疫染色の結果から、カイコでは利尿ホルモン45(DH45)、グリコプロテインホルモン、ニューロパルシンが中枢神経系のEcdysis-triggering hormone(ETH)受容体と共発現することが新たに確認されたことから、これらの神経ペプチドもカイコの脱皮行動制御に関与することが示唆された。 4.カイコで脱皮の制御に関与することが推定された遺伝子の機能を確認するため、RNA干渉(RNAi)が有効なトビイロウンカを用いて遺伝子ノックダウン実験をおこなった。アラトスタチンCCや前胸腺抑制ペプチド(PTSP)、およびPTSP受容体遺伝子はRNAiにより幼虫脱皮が阻害されたことから、アラトスタチンCCやPTSPはトビイロウンカの脱皮制御に関与することが確認された。
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