研究課題/領域番号 |
21380041
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
瀬筒 秀樹 独立行政法人農業生物資源研究所, 遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット, ユニット長 (70342805)
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研究分担者 |
河本 夏雄 独立行政法人農業生物資源研究所, 遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット, 主任研究員 (30355747)
冨田 秀一郎 独立行政法人農業生物資源研究所, 遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット, 主任研究員 (30360457)
畠山 正統 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫成長制御研究ユニット, 主任研究員 (50281142)
新美 輝幸 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教 (00293712)
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キーワード | トランスジェニック昆虫 / エンハンサートラップ / 部位特異的組換え / 人工プロモーター / トランスポゾン |
研究概要 |
昆虫各種において効率的かつ汎用的なプロモーター探索システムおよび汎用性の高いプロモーターを開発するために、前年度に引き続き、部位特異的組換えの条件設定、改良エンハンサートラップ用のベクター構築、ベクターを導入した遺伝子組換え系統の作出、プロモーター探索等を行なった。カイコでは、部位特異的遺伝子導入系を組み込んだ改良エンハンサートラップベクターの構築と組換え体作出を開始した。また、pBac[A3-GFP(FRT)Gal4]を導入したカイコ系統について、様々な組織でのクローン解析に用いることができるように、piggyBac転移酵素を発現する系統と交配して挿入配列を転移きせ、脂肪体以外に皮膚や筋肉など、異なる組織でGFPの発現が観察される系統を樹立した。カブラハバチでは、piggyBac転移因子とtTAとEGFPのキメラタンパク質を産出する系統を交配してエンハンサートラップを実施中である。また、リポフェクション法によって、あるプロモーターが機能する可能性を見出した。ナミテントウでは、ナミテントウのcytoplasmic actin遺伝子のプロモーターの有効性をTet-Offシステムを利用して検証するためのベクターを作製した。プロモーター探索では、幅広い昆虫種で利用可能と思われるプロモーターと新規マーカー遺伝子の候補を用いたベクターを構築した。このベクターをカイコに導入したところ、このプロモーターとマーカー遺伝子がワークすることがわかった。そこで次に、このベクターが昆虫各種でワークするかを検証するために、キイロショウジョウバエ、カブラハバチ、ナミテントウ各種において遺伝子組換え個体の作出を開始した。また、別のプロモーターの改良のために、これまで活性が低かったプロモーター候補配列を3回繰り返すことによって活性増強が可能かを検証するためのベクターを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
部位特異的組換えがカイコ等で機能することが示され、次世代型の組換えベクターに利用可能であることが示される等、予想を上回る成果を上げている。キイロショウジョウバエ以外の昆虫では遺伝子組換え昆虫を作出・飼育するのに手間と時間がかかるという難点があるにも関わらず、それぞれの昆虫種で実験が進みつつある。汎用的なプロモーター開発に関しては、昆虫ゲノム情報が予想以上に得られており、利用可能性が拡大しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
現在、昆虫・節足動物5000種のゲノムを解読することを目標とする「i5k(5,000 Insect and Other Arthropod Genome Initiative)」という計画が世界的に進められている。しかし、それらのポストゲノム研究として遺伝子機能解析や応用研究をどのように進めていくのかが、非常に重要な課題となりつつある。本研究は、昆虫各種において汎用的な遺伝子機能解析ツールの開発を目指しており、まさにそれらのポストゲノム研究に有用な基盤技術を提供するものである。本研究課題で取り扱っているカブラババチやナミテントウのゲノムも近年中に解読される予定であるため、現在の研究の方向性をさらに発展させながら進めていく必要がある。
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