研究課題
日本列島に生息するクワコのW染色体の多様性を類推するため、雌ではWと連鎖して伝わるミトコンドリアDNAの多様性を、フェロモントラップにより広域かつ大量に雄成虫を採集し検討した。25集団1506個体に対してCO1遺伝子の塩基多型を指標に評価を実施したところ、74の異なるハプロタイプが確認された。個々のハプロタイプ間の塩基の違いは最大7、平均3.05であった。集団間のハプロタイプの分布には異質性が見られた。これは、W染色体においても大きくはないものの地域間変異が存在することを示唆した。また、アジア各地から採集したクワコ近縁種のゲノムおよびW染色体構造を比較し、進化を解析することを目的に、インド北部UttarakashiとSikkim、タイChiangmai、ベトナム北部TamDaoでクワコ近縁種を採集した。これらのゲノムDNAをW特異的マーカーや雌決定遺伝子Fem候補のz1、z20(zinc finger protein)遺伝子、およびミトコンドリアCO1,CO3について調べ、これまでに入手している様々な地域由来のクワコ近縁種のデータとともに系統樹解析を行った。z1、z20は日本クワコのWにはなかった。性決定遺伝子の進化は速く、同一種においても集団によって多様性を示す場合がある。そのため大陸クワコと日本クワコは異なる性決定遺伝子を持つ可能性がある。日本クワコWが中国・韓国クワコWと構造が全く異なることを発見し、今回、アジア広域におけるクワコWの分散地図を作成した。また、その系統解析を行い、どのようにして2つの異なるWが誕生したかを推定した。また、インドクワコB. huttoniはクワコB.mandarinaと1400万年前に分岐し、B. huttoniは熱帯、亜熱帯の暖かい地域に進出し、クワコはアジアの寒い地域、温帯や亜寒帯に分布したと推測された。
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