研究課題
各野蚕種の系統・分岐年代はミトコンドリア等のマーカーのシークエンスで解析可能である。しかし、実際のゲノムのダイナミックな変遷を知るために、ゲノム中に存在するSINE(短鎖散在反復配列:short interspersed nuclear element)に注目した。SINEは染色体の再編成・遺伝子の発現調節等に関与し、ゲノムに最もインパクトを与えると予想される。そこでカイコ類縁野蚕ゲノムでBm1の解析を行った。Bm1およびその類似型SINEは多くのカイコガ上科のゲノムにも存在することが分かった。Bm1構造の比較解析から、Bm1の駆動部の起源は転写因子Kendoで、約5400万年前に分離したこと、およびBm1は発現部と駆動部が機能的に独立しており、相互に交換することにより進化したことがわかった。さらに、Bm1は現在も数百の活性型を持ち活発に増殖していること、Bm1の系統特異的な変異を分類することで年代測定の標識として利用可能であることを明らかにした。いっぽう、転移因子mariner-like element(MLE)は多くの生物のゲノムに存在していることから水平伝播によって広がったと考えられている。カイコにもMLEは6タイプ報告されており、タイプごとにコピー数が異なっている。その中で唯一ゲノム上に1コピーしか存在しない第6番染色体上のBmTNML座位(MLEにL1BmとBMC1が入れ子に挿入されたユニット)について、これら3つの転移因子のこの座位への挿入時期と順位を、クワコで明らかにした。3つの転移因とホストゲノみの置換速度はほぼ同じで、MLEはカイコとクワコの共通祖先のゲノムに挿入した古いMLEであること、BmamaT1は一部のクワコ集団ゲノムに最近挿入され、また抜け出たことが確認された。BmamaT1もクワコにおいて現在も活性を持っている可能性が示唆された。
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