研究概要 |
福岡,大分,熊本県の施設土壌を採取し,リンの形態分析を行った.その結果,当初予想していた吸着態リンよりも遊離のリン酸カルシウム塩として存在するリンの方がはるかに多い土壌が大半であった.そのため,吸着リンの吸脱着のモデル化を軸にした可給態リン評価法構築を断念し,陰イオン吸着体を土壌に埋設することによる評価法を採用した.しかし,極端に多量のリン酸塩が集積した土壌もまれではなく,従来用いられていた陰イオン交換樹脂,陰イオン交換膜,水酸化鉄含浸ろ紙などはいずれも吸着容量が不足した.そこで,あらたにリン酸イオンを特異吸着するアカガネアイトを合成し,それをアクリル円盤とメンブランフィルターに挟み込んだ,リン酸イオン吸着ディスクを作成した.このディスクはアカガネアイト量を調節することにより,吸着容量を増減できる.また,合成したアカガネアイトは1mol/kgのリン酸を吸着した時でも,平衡濃度を1μmol/L以下に保つことができた. カリウムについては,カリウムイオンの関与する陽イオン交換反応の選択係数を簡易に測定できる方法を開発し,粘土鉱物組成の異なる土壌に適用して選択性を評価した.さらに九州沖縄の主要農耕地土壌3タイプ(灰色低地土、黄色土、黒ボク土)をカリウムイオン飽和した後,振とう-遠心分離を反復する連続洗浄法により,水溶出性を調査した。黒ボク土は陽イオン交換容量(CEC)が大きいにも関わらず,カリウムイオンの水抽出性は他土壌より20~30%大きかった.この結果は,可給態カリウム量および,その挙動を把握するには,CECだけでなくカリウム選択性を評価すること重要性を示している.
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