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2011 年度 実績報告書

高地温が助長するイネ幼苗の低温障害の発生機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21380051
研究機関独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

鈴木 健策  独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター・生産基盤研究領域, 上席研究員 (90355280)

キーワードイネ幼苗 / 気温地温バランス / 光化学系II複合体 / 低温障害 / 電子伝達 / 光合成 / 光化学系II過剰還元 / 硝酸蓄積
研究概要

高地温依存の低温障害は、水耕液が硝酸を含む時に起こる(21年度)。しかし硝酸飢餓の幼苗を気温10℃+地温25℃処理(L/H処理)すると、より顕著な障害が起こることがわかった。このような条件では、高親和性硝酸輸送体の誘導等により、L/Hに特異な葉への硝酸蓄積(21年度)がさらに促進されるためと考える。
L/H処理を24時間行うと光化学系IIのQ_AからQ_Bへの電子伝達が完全に遮断される(22年度)。しかし、その葉から単離したチラコイド膜の電子伝達機能は低下しなかった。またその葉から抽出した光化学系構成タンパク質、およびその複合体の構成等に変化はなかった。そこに5時間程度光を当てると、単離チラコイド膜の光化学系IIの電子伝達機能が著しく低下し、抽出液中にCP43の欠如した光化学系H複合体が増加した。またCyt b_<559>のβサブユニットの欠落も認められた。L/L処理ではこのような変化はなかった。これらのことからL/H処理を24時間行った場合のQ_AからQ_Bへの電子伝達の遮断は、光化学系IIと硝酸や亜硝酸の可逆的な相互作用によるものと考えられる。またその後の光に依存した光化学系Hのin vitro活性の失活も、タンパク質の分解や複合体の解離等を伴わない光化学系H複合体の不可逆的失活の結果と考える。
3年間の結果から、L/H処理では、低温の葉に蓄積した硝酸や亜硝酸と光化学系II複合体の間の直接あるいは間接的な作用により光化学系IIのQ_AからQ_Bへの電子伝達が完全に遮断され、その結果、熱放散(活性酸素消去系)が機能しなくなると共に光化学系IIが過剰還元状態となり、活性酸素や過酸化脂肪を生じ、これによりチラコイド膜、葉緑体包膜、細胞膜等の生体膜が破壊され、葉の枯死に至ると考えられる。葉への硝酸や亜硝酸の蓄積と光化学系IIの電子伝達遮断の関係は今後の課題である。その後の光に依存した光化学系II複合体の変化は電子伝達のin vitro活性の失活の原因としては小さいため、チラコイド膜損傷の結果と考える。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] High root temperature blocks both linear and cyclic electron transport in the dark during chilling of the leaves of rice seedlings2011

    • 著者名/発表者名
      Suzuki, K., Ohmori, Y., and Ratel, E
    • 雑誌名

      Plant and Cell Physiology

      巻: 52(9) ページ: 1697-1707

    • DOI

      DOI:10.1093/pcp/pcr104

    • 査読あり
  • [学会発表] 低気温環境下において地温はイネ幼苗の光化学系II複合体構成タンパク質に影響を及ぼす2012

    • 著者名/発表者名
      鈴木健策、大森幸美
    • 学会等名
      第53回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      京都産業大学(京都市)
    • 年月日
      2012-03-16
  • [学会発表] 幼穂形成前のイネの光合成機能に及ぼす地温気温バランスの影響2011

    • 著者名/発表者名
      鈴木健策、倉永知佳、松村尚和
    • 学会等名
      東北植物学会第1回大会
    • 発表場所
      岩手大学(盛岡市)
    • 年月日
      2011-12-17
  • [学会発表] イネ幼苗光合成の地温依存性の低気温障害と硝酸蓄積2011

    • 著者名/発表者名
      鈴木健策、大森幸美
    • 学会等名
      日本植物学会第75回大会
    • 発表場所
      東京大学(東京都)
    • 年月日
      2011-09-17

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公開日: 2013-06-26  

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