研究概要 |
真菌細胞にとって必須な細胞壁多糖β-1,6-グルカンの生合成機構を明らかにするため、我々が発見した必須遺伝子産物Keg1と結合し、グルカナーゼと相同性がある、Kre6を中心に調べた。部分ペプチドを抗原として得たウサギ抗Kre6血清は、非特異的なシグナルもあるが、活性を保持するHAタグ標識タンパク質と同様に、細胞壁合成が盛んな芽が強く染まる蛍光染色像を示した。これが細胞質膜にあるか、その近傍の膜構造体にあるか明らかにするため、細胞周期を同調させ大きさの揃った芽をもつ細胞を温和に破砕し、条件を様々に変え、庶糖密度勾配遠心で分画したところ、Kre6タンパク質は、小胞体膜マーカーと常に同じ画分に検出された。更に詳細な構造を見るため、免疫電子顕微鏡観察を始めた。予備検討では、ウサギ血清は非特異シグナルのため使えず、抗HA抗体のみだが、細胞質膜より内側に多くシグナルが認められ、芽の細胞質膜近傍の小胞体への局在が支持された。他のグルカン合成関連タンパク質の抗体作製と相互作用の解析は、各タンパク質の不安定性などのため難航し、断片の位置を変えるなど次年度継続する。浸透圧ショック法で透過性にした酵母細胞で、無細胞グルカン合成系構築を検討した。^<14>Cでグルコースを標識したUDP-グルコースを基質とし、30℃で反応後、煮沸により反応停止し、基質から転移された^<14>Cグルコースについて、様々な検討を行った。熱水不溶・クロロホルム不溶の放射性カウントは、温度依存的に孵置時間とともに増加した。その一部がβ-1,3-グルカナーゼ処理で水溶化されたことから、細胞壁合成の一部はこの系で進行したことが確認され、β-1,6-結合をもつ産物について次年度検討する基礎ができた。
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