研究概要 |
Pseudomonas属細菌に、哺乳動物の芳香族アミノ酸脱炭酸酵素遺伝子と高い相同性を持つ遺伝子を発見し、これを大腸菌にクローニング、大量発現させ、酵素タンパク質を均一標品に精製した。本精製酵素標品を用いて、酵素化学的性質を調べ以下のような結果を得た。本酵素はホモ2量体を形成しており、サブユニット当たり1.0(±0.1)分子のPLPを結合することが明らかとなった。本酵素はL-ドーパに対して最も高い活性を有し、5-ヒドロキシ-L-トリプトファン,L-フェニルアラニン,L-チロシン,およびL-トリプトファンにも作用した。これらの結果から、本酵素は広い基質特異性を持つ哺乳類型酵素に類似した性質を持つことが明らかになった。本酵素の結晶化を試み、結晶標品を得た。 石川県の伝統的発酵食品等から乳酸菌を分離し、各株のアミン生成活性を測定した。菌株によりアミン生成活性に相違がみられたが、複数の株においてチラミンおよびフェネチルアミンの高い生成活性が見られた。 Enterococcus属に属する2種の乳酸菌から脱炭酸酵素遺伝子を単離し、大腸菌において発現させ、均一標品にまで精製を行った。至適pH、至適温度等、本酵素の基本的性状を詳細に明らかにしたほか、基質特異性を明らかにした。その結果、本酵素はL-チロシン以外にも、L-ドーパおよびL-フェニルアラニンに対する脱炭酸活性を有していることが明らかとなり、発酵食品中においても複数の芳香族アミンの産生に関わっている可能性が示唆された。本酵素の結晶化も現在進めているところであり、芳香族アミン生成メカニズムを構造および機能の両面から明らかにする予定である。
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