食糧関連酵素の機能に大きくかかわる可動ループ部分の構造変化のメカニズムを解明するために、実際に食品産業において用いられているβ-アミラーゼ、アルギン酸リアーゼ、プロテイングルタミナーゼおよびトランスグルタミナーゼについて、以下の研究を行った。 1.β-アミラーゼのフレキシブルループ上の残基であるAsp101、Va199およびループのヒンジ部分の残基であるGly96、Gly97とIle102の変異体を作製し、基質アナログであるマルトース濃度を変化させて各濃度でX線結晶構造解析を行い、これらの変異のループの動きに対する影響を詳しく検討した結果、Asp101を変異すると基質と正常な相互作用ができず、フレキシブルループが閉じないこと、Val99は基質と弱い相互作用するのに必要なこと、Gly96の変異はオープン型のフレキシブルループの構造をを安定化していることが明らかになった。 2.アルギン酸リアーゼA1-IIIの触媒残基の変異体であるY246FおよびH192Aの基質複合体結晶の凍結条件を検討し、高分解能X線結晶構造解析を完成した。 3.プロテイングルタミナーゼのプロ型の構造解析を完成させた。その結果、プロ型の阻害ループ上のAla68残基が触媒残基のCys177の近傍に位置することが明らかになったので、このAlaをGln、Gluに変異した変異体を作成し、各変異体の高分解能X線結晶構造解析を行った。 4.トランスグルタミナーゼの中間型およびプロ型の構造解析完成させ、さらなる変異実験を行うために、本酵素のプロ型酵素大腸菌での発現系の構築を行った。
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