研究概要 |
食糧関連酵素の機能に大きくかかわる可動ループ部分の構造変化のメカニズムを解明するために、実際に食品産業において用いられているβ-アミラーゼ、アルギン酸リアーゼ、プロテイングルタミナーゼおよびトランスグルタミナーゼについて、以下の研究を行った。 1. β-アミラーゼのフレキシブルループを削除したループレスの変異体およびLys295をAlaとMetに変換した酵素を作製し、基質アナログであるマルトース濃度を変化させて各濃度でX線結晶構造解析を行い、これらの変異のループの動きに対する影響を詳しく検討した結果、いずれの変異酵素ともサブサイト+1, +2に結合するマルトースの解離定数が増大し、結合したマルトースの温度因子も大きくなるのに対してサブサイト-2, -1に結合するマルトースの結合とインナーループの構造変化のマルトース濃度依存性は野生型酵素とほぼ同じであった。これらのことからフレキシブルループ、インナーループおよびLys295の構造変化は一部が連動し、サブサイトの親和力を切り替えることによって触媒効率を高めていることが明らかになった。 2. プロテイングルタミナーゼのプロ型の阻害ループ上のAla47をGlnに変換した酵素の構造を決定した結果、Gln47は本酵素の触媒残基であるCys156と共有結合中間体(Sアシル中間体)を形成していることを見出した。この構造を基に本酵素がトランスグルタミナーゼやチオールプロテアーゼと同様の反応機構を有していることをはじめて明らかにした。 3. トランスグルタミナーゼの中間型の構造から、中間型酵素はプロ領域の切断後も一部が成熟型酵素に結合した状態であり、活性部位が覆われているため、酵素の安定性を高めていることを明らかにした。
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