研究課題
食糧関連酵素の機能に大きくかかわる可動ループ部分の構造変化のメカニズムの解明および新たな可動ループの設計を行うために、実際に食品産業において用いられているβ-アミラーゼ、アルギン酸リアーゼ、プロテイングルタミナーゼおよびトランスグルタミナーゼについて、これらの酵素のループの構造と機能を徹底的に解明することを目的として研究を行った。β-アミラーゼとアルギン酸リアーゼについては、基質の取り込みと生成物の放出に重要な可動ループ上のアミノ酸変異体を作成し、可動ループの構造と機能の解析を行った。β-アミラーゼの構造変化は結晶中で容易に観察できるため、種々の変異体を作成して、活性部位近傍に存在する二つ可動ループ(フレキシブルループとインナーループ)の構造変化と基質アナログ濃度との関係を結晶中で定量的に測定することができ、基質の取り込みから生成物の遊離の過程における酵素の一連の構造変化を推定することが可能になった。アルギン酸リアーゼについても結晶中でのリッドループの構造変化の詳細と酵素反応機構を明らかにした。一方、プロテイングルタミナーゼとトランスグルタミナーゼについては、活性部位を覆うプロ酵素のループ上のアミノ酸変異体を作成し、これらの酵素の触媒機構とプロ酵素における不活性化の機構を明らかにすることを目的として研究を行った。その結果、プロテイングルタミナーゼについては、プロ領域の変異体であるA47Qによって、結晶化条件にアンモニアイオンが存在するときにはミカエリス型の複合体が生成し、アンモニアイオン非存在下では酵素反応の共有結合中間体であるS-アシル酵素が生成することを結晶構造から明らかにし、本酵素の触媒機構を決定することができた。
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