研究概要 |
新規ビタミンD誘導体合成と生物活性の評価 CD環がcis配置の14-epi-1α,25(OH)_2D_3は、[1,7]-シグマトロピー転位により、より安定なプレ型に熱的平衡が偏っている。ビタミンD受容体(VDR)への親和性は低くなるが、CYP24A1による代謝を受けにくくなる。プレ型ビタミンDの生理活性を純粋に調べるため、[1,7]-シグマトロピー転位の起こり得ない19位メチル基を除去した化合物を合成した。この化合物の誘導体を種々、合成したところ、強い転写活性を示すものが見出された。プレ型構造を持つ限り、この結果は説明できないことから、トリエン構造への異性化が示唆された。HPLCで精査したところ、予想通り6,7-cis結合(19-norprevitamin D_3)から6,7-trans結合(14-epi-19-nortachysterol)へと構造変化した化合物の単離に成功した。そこで14-epi-19-nortachysterolを直接化学合成し、その異性化体の構造を確定するとともに、生物活性を評価した。14-epi-19-nortachysterolの2位メチル体(2α体と2β体)を取得し、VDR結合能を調べたところ、2位エキソメチレン置換体では天然の活性型ビタミンD_3の83%という高い親和性を示した。また、2位メチル基の立体化学も大きく影響することがわかった。ヒトVDRのリガンド結合領域(LBD)との共結晶X線構造解析を行ったところ、C7,8-s-transとC5,6-s-trans配置をとり、2位メチル基がある場合にはその立体化学に関わらず、2つの単結合がs-trans配置をとることがわかった。活性型ビタミンD_3のVDR共結晶構造とA環部および側鎖部は位置的によい一致を見せており、1α,3β,25位の水酸基はほぼ同じ位置を占めた。今後、細胞増殖抑制作用およびCYP24A1による代謝を調べる予定である。
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