研究課題
本研究では、イネにおける病原細菌認識の分子機構を明らかにすることを目的として、イネにおける鞭毛タンパク質フラジェリン分子の受容メカニズムとその受容シグナルの伝達機構について調べる。本年度の研究によって、シロイヌナズナはフラジェリンのN末端22アミノ酸を認識して免疫反応を誘導するのに対し、イネはフラジェリンのC末端ドメイン約20kDaを認識することを明らかにするとともに、この受容体としてFliRK1、FliRK2と名付けた受容体型キナーゼを同定した。さらに、イネにおいてはFliRK1とFliRK2が細胞膜上でヘテロダイマーを形成している可能性を新たに示すことが出来た。また、このフラジェリン認識シグナルはカルシウム依存性プロテインキナーゼ(CPK)によって細胞内に伝達されることを明らかにするとともに、特にOsCPK8とOsCPK12がこの認識情報の伝達に関与することを初めて明らかにした。次に、フラジェリンとFliRK1との結合にはフラジェリンの糖鎖も関与することを明らかにした。イネに対して非親和性菌株のフラジェリンはイネに認識され免疫反応を誘導するが、イネに対して親和性菌株のフラジェリンは免疫反応を誘導しない。両者のフラジェリン間には14アミノ酸の置換が存在するが、このアミノ酸の置換は認識特異性には関与しなかった。そこで、両者間に存在する糖鎖構造について調べたところ、親和性菌株のフラジェリンでは3つのセリンと1つのスレオニン残基にそれぞれ分子量約500の糖鎖が存在するが、非親和性菌株のフラシェリンにはこのうちの一カ所のアミノ酸に糖鎖が存在しないことが明らかとなった。さらに、このアミノ酸を他のアミノ酸に置換したフラジェリンを作成することによって、この糖鎖構造の違いが特異的認識に重要であることを初めて明らかにすることが出来た。
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