生体抗酸化系の一つとして機能していると考えられるシスチン・グルタミン酸トランスポーター(xCT)の発現制御と生理機能について検討を行った。平成21年度は、以下のような点を明らかにした。 1xCTの発現部位について消化管を中心に調べたところ、パイエル板と腸間膜リンパ節でxCT mRNAの構成的な発現が認められた。これにより、胸腺、脾臓等のリンパ組織に加え、消化管関連リンパ組織においてもxCTが構成的に発現していることが示された。 2パイエル板および腸間膜リンパ節に存在するリンパ球とリンパ球以外の支持細胞とに分けてxCTの発現を調べたところ、リンパ球では、xCTがほとんど発現していないのに対し、支持細胞では、xCTが強く発現していることがわかった。このことから、支持細胞において、xCTを介して取り込まれたシスチンが、細胞内でシステインに還元され、これが、支持細胞から放出されることにより、リンパ球のグルタチオン維持に利用されていると考えられた。 3肺胞マクロファージにおけるxCTの発現とグルタチオンとの関連性を検討したところ、肺胞マクロファージでは、腹腔マクロファージとは異なり、xCTが構成的に発現していることがわかった。また、肺胞マクロファージの細胞内グルタチオンは、腹腔マクロファージと比べて数倍程度高かった。このことから、肺胞マクロファージにおいては、xCTが、細胞内グルタチオンの維持に寄与していると考えられた。 4アサツキの可食部分から調製した抽出液をマウス膵臓ランゲルハンス島B細胞由来のβTC3細胞やマウス腹腔マクロファージに添加したところ、細胞内グルタチオンレベルが有意に上昇することがわかった。また、アサツキ抽出液は、xCTの発現を誘導することが示唆された。
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