申請者らによって初めて遺伝子cDNAがクローニングされたアミノ酸トランスポーターの一つシスチン・グルタミン酸トランスポーター(xCT)は、種々の刺激によって発現が制御されるが、食品成分がその発現にどのような影響を与えるか十分に解明されていない。これまでの研究から、ある種のフラボノイドによって、培養細胞レベルでxCTの発現が誘導されることが明らかになった。これに伴い、主要な細胞内抗酸化物質であるグルタチオンの細胞内レベルが上昇することもわかった。このような状況を踏まえ、本年度は、以下のような点を明らかにした。(1)アサツキなど地域の食材としてネギ科植物に注目し、その抽出液について細胞機能への影響を調べた。マウス膵臓B細胞由来βTC3細胞にアサツキやギョウジャニンニクの水抽出液を添加したところ、インスリンの分泌能にほとんど影響は見られなかった。一方、酸化ストレス負荷により、インスリン分泌能は著しく低下したが、アサツキ等の水抽出液を前処理しておくことによって、酸化ストレス負荷によるインスリン分泌能の低下が有意に抑制されることが明らかとなった。(2)xCTの個体レベルでの機能を調べる一環として、シスチン・システイン欠乏食をxCT遺伝子欠損マウスに摂取させた時の影響を調べた。その結果、組織学的には、有意な差は認められなかった。しかし、血中のシスタチオニン量が野生型マウスに比べて、欠乏食給仕により有意に減少することがわかった。(3)病態モデルの一つとして、細菌性リポ多糖(LPS)の投与による感染症におけるxCTの役割を調べるために、マウス腹腔マクロファージを用いて、感染に伴い産生される一酸化窒素(NO)の動態を調べた。その結果、xCTは、細胞内めシステイン・レベルを高めることにより、NOの細胞外への放出に寄与していることが示唆された。
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