研究概要 |
経口摂取においては胃で分解されずに、小腸や大腸に送達可能な壁材を利用することになる。小腸送達システムについては多くの実用化例があるが、大腸送達システムは確立されていない。本提案は難消化性糖類を壁材とする新規大腸送達システムの構築が必要とされる。昨年度は大腸送達の例として、酪酸を検討し、酪酸にキトサンを混合して作成した固形物粒子を、常温で固化して油をカプセル化する方法が有力であることを示した。今年度は、油をスターチ粒子で安定化する手法について検討をおこなった。スターチは親水性を示すが、表面改質により疎水性を付与することができる。これは、次の段階として難消化性スターチの利用を考えた予備検討である。すなわち、難消化性スターチに由来する物質で内包することで、大腸送達を可能とするものである。表面改質としては、スターチ粒子へのアルケニル官能基の付与と、得られた粒子を用いた乳化特性を検討した。スターチ粒子を、オクテニルこはく酸無水物のエタノール溶液に浸漬し、その表面特性の変化を解析した。得られた改質デンプン粒子を乳化剤として、予備乳化(ポリトロン乳化機、5,000rpm,5分)および高圧乳化(マイクロフルイダイザー、20-160MPa)を用いて、油/水分散系の作出を試みた。コーンスターチを用いた場合、FT-IRスペクトル分析により処理時間が増やしても-OH基から-C=0基への変換が十分起こらなかった。これはpHや温度条件のさらなる検討が必要である。スターチの種類により異なり、キノア由来のスターチを用いた場合、30wt%のスターチ粒子を含有する水中に、ドデカンの安定な乳化分散系を得ることができ、より高い圧力条件下でより小さい分散系を作出することができた。今後はさらに効率的なスターチ改質法の検討と体内動態特性の解明を図る。
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