経口摂取においては胃で分解されずに、小腸や大腸に送達可能な壁材を利用することになる。小腸送達システムについては多くの実用化例があるが、大腸送達システムは確立されていない。これまで大腸送達の例として、酪酸を検討し、酪酸にキトサンを混合して作成した固形物粒子を、常温で固化して油をカプセル化する方法が有力であること、また油をスターチ粒子で安定化する手法について検討を進めてきた。今年度は、酪酸を高含量で溶解した水相を油相(大豆油やパームステアリン)に分散系の作出をまず検討した。数100ナノスケールの粒子径をもつ安定な分散系の作出が可能であることを明らかにした。あわせて、体内摂取後も安定性の高い食物繊維の微細化について検討した。食物繊維は健康を促進する成分として注目を浴びており、加工研究も行なわれているが、詳細な微細化研究はみられない。そこで繊維質を含む野菜や未利用資源の湿式粉砕を行い、前処理条件、粉砕条件と微細化物特性(粒度分布、粘度、粒子の形状)の関係を明らかにした。試料としてニンジン、ゴボウ、等を用いて、煮沸処理が微細化特性に与える影響と異なるpH条件での煮沸処理が微細化特性に与える影響についてマスコロイダーとナノマイザーを用いて粉砕を行った。煮沸処理の影響は特にニンジンでみられた。ナノマイザー処理後の粒子径10μm以下の割合が煮沸したニンジンの方が40%多くなった。その他の試料では、顕著な違いはみとめられなかった。異なるpH条件での煮沸処理が与える影響では、特にニンジンで見られた。pH9、pH10の水溶液中で煮沸処理したニンジンはナノマイザー処理後の粒子径1μm以下の割合が全量になった。以上食物繊維含量だけでなく、粒子の形状も微細化特性に影響している可能性を示した。また微高pHの水溶液でニンジンを煮沸処理し、粉砕することでサブミクロンの大きさの粒子を作製できることがわかった。
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