研究課題
腸上皮の免疫制御機能に対する食物質の作用を明らかにすることを目的として、カルノシン、乳酸菌、ビフィズス菌を対象に、ヒト腸管上皮細胞(IEC)株Caco-2細胞及びマウス小腸IEC株MoS13細胞を用いて、その作用メカニズム、腸管免疫系に及ぼす効果について解析を行った。カルノシンはリポタイコ酸(TLR2/6リガンド)、フラジェリン(TLR5リガンド)による刺激で誘導されたCaco-2細胞のIL-8分泌を、Pam3CSK4(TLR1/2リガンド)刺激時と同様に増強し、逆にpoly(I:C)(TLR3リガンド)およびイミキモド(TLR7リガンド)の刺激で誘導されるIL-8分泌を抑制した。Pam3CSK4刺激で誘導されるIL-8mRNAは、カルノシン存在下で最大mRNA量が顕著に増加し、その安定性も上昇した。また、阻害剤を用いた実験によりp38 MAPK経路がこの亢進効果に関与していることが示唆された。ビフィズス菌で刺激したMoS13細胞の培養上清は、マウス腸管より得た粘膜固有層B細胞のIgA産生を増強した。これがどの分化段階のB細胞に対する作用なのかを検討するため、マウス小腸粘膜固有層から各分化段階のB細胞(IgA+B細胞、形質細胞など)を精製し、それぞれに対するIEC上清の作用を解析した。その結果、形質細胞画分にこの培養上清を添加した場合にのみIgA産生増強効果が観察された。卵白アルブミン(OVA)特異的T細胞受容体遺伝子導入マウスであるDO11.10マウスに、OVA含有水を自由摂取させることにより経口免疫寛容を誘導する実験系において、乳酸菌を強制経口投与した場合に、この経口免疫寛容の誘導が増強された。この時、脾臓細胞のIL-10産生およびT細胞応答抑制活性の上昇が観察され、これがある種の制御性T細胞画分の増加と活性増強によるものであることが示唆された。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 73巻8号
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ミルクの事典(分担執筆:III.乳・乳製品と健康 4.2プレバイオティクス)(朝倉書店)
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