研究課題
(1)10xP配列で挟まれたゲノム領域がCreリコンビナーゼを発現するアデノ随伴ウイルスの感染により脱落することを利用して、flox/floxマウスの脳の左半球にCreリコンビナーゼを発現するアデノ随伴ウイルスを注射し、4週間後に注射部位でER-60の発現低下を認めた。同様の処理を行ったflox/floxマウスの脳にアミロイドβペプチドを注射し、脳組織への影響を検討した。(2)ER-60のアミロイドβペプチド結合領域であるbb'ドメインと結合最小単位ペプチドとの複合体結晶を作製し、SPring-8でのX線結晶構造解析により分解能1.38Åの解析データが得られ、アミロイドβと推定される電子密度がbb'の境界に存在するトンネルの入り口付近に見いだされ、一定の立体構造を持ったアミロイドβペプチドをER-60が結合するのではなく、フレキシブルな構造のアミロイドβペプチドとの会合・解離を繰り返すことによりその線維化を阻害するというメカニズムの提唱に至った。この成果は、小胞体分子シャペロンの基質認識に関する始めての知見である。(3)ob/obマウスの脳を免疫組織染色法により観察し、大脳皮質でER-60の発現量が低下していることを明らかにした。(4)ob/obマウス及びdb/dbマウスの脳及び肝臓におけるER-60以外の小胞体分子シャペロンの発現の低下、及びob/obマウスへのレプチンの腹腔内投与による小胞体分子シャペロンの発現誘導を見いだした。これらの結果から、病的肥満で起こるレプチン抵抗性やインスリン抵抗性により小胞体の分子シャペロン量が低下することが示唆された。さらに、30週間の高脂肪食摂取条件では、野生型マウスに比較してノックアウトマウスの肝臓で小胞体分子シャペロン発現量が高く、ER-60の欠損により肥満状態で肝臓に小胞体ストレスが生じやすいことを明らかにした。(5)プロテオーム解析を22年度に引き続き行い、肝臓で複数の膜結合型糖たんぱく質の量がノックアウトマウスで減少していることを明らかにした。
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