(1)行動する動機の強さの測定を利用した新たな疲労度定量法の開発:脳内自己刺激によって報酬を受けることにより行動を動機づけられた動物を用い、その行動が様々な原因の疲労や疲労感を引き起こす物質の投与によって影響を受けるかどうかを検討・し、疲労度の測定として応用することができるかどうかを検討した。本年度は装置のセットアップを行い、予備実験的にラットmedal forebrain bundleに刺激電極を設置したが、電極作成精度が低く、目的の位置に設置できていないために明確な動機づけ行動がまだ得られていない。 (2)脳内報酬/鎮痛系の疲労感の発生への関与に関する研究:κ-オピオイドは鎮痛作用を持つという意味でオピオイドであるが、μ-オピオイドとは対照的にκ-オピオイドは不快感を引き起こす。この作用は疲労時の感覚との類似を想起させる。そごで脳内のκ-オピオイド受容体に特異的なアゴニストが結合することで疲労様の行動が引き起こされるかどうかを検討した。κ-アンタゴニストであるU69593を第三脳室に投与するとラット自発行動が有意に抑制され、疲労様の行動が引き起こされることが示された。 (3)末梢組織のエネルギーレベル低下が中枢性疲労を発生する機構の可解明:末梢組織におけるエネルギー獲得状態を薬物投与によって修飾し、これによって疲労様の行動が発現するかを検討した。脂肪酸酸化の阻害剤であるメルカプト酢酸、およびグルコース酸化の阻害剤である2-デオキシグルコースをラットの腹腔内に投与するといずれも自発行動が抑制され、疲労様の行動が引き起こされることが明らかとなった。その時脳脊髄液中の活性型TGF-β濃度を測定したが、前者ではその濃度増大が見られたが後者では変化はなかった。エネルギー獲得の阻害によっていずれも疲労様の行動が見られたが、その行動発生機構は異なると考えられた。
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